長めの独り言置き場

家庭用ゲームの話題中心に、書きたいこと書いていきます。

PSVRとASTRO BOTでゲームの興奮が息を吹き返した

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 先日、勢いで買ったPSVRとASTRO BOT

その楽しさにTwitterにて一人ではしゃぎ倒し、書く気力が一時的に復活したので、書く。

 ↓体験版の配信が開始されたみたい。

 

 ここ数日、PlayStation VR専用タイトル『ASTRO BOT : RESCUE MISSION』をぶっ続けでプレイしていた。初見の感想ツイートを投稿したのが7日前のようだから、丁度1週間。プラチナトロフィーを獲得するまでやり込んだ感想を結論から言うと、非の打ち所がない完成度・満足度の作品だ。ASTRO BOTは、この2018年にゲーム熱が飽和して不感症に陥っている真っ最中の私に、そう言わしめた。

 今回書く内容は、これまでの記事よりはレビュー(批評)を意識している。そこで、以前から考えていた3つの指標を用いて評価してみることにする。3つの指標の1つめは、「創造性」。「新鮮味」と言い換えられる。2つめは、「ビジョン実現度」。「完成度」と言い換えられる。3つめは、「ゲームプレイ充実度」。新鮮味と完成度の度合いにも拠るが、「満足度」…或いは「ボリューム」と言い換えられる。この内、完成度と満足度は既に「非の打ち所がない」と述べてしまったが、5つ星による評価の発表と共に、より詳しく書いていく。

 批評に入る前に、作品の概要を書いておこう。

 『ASTRO BOT : RESCUE MISSION』は、SIE JAPAN StudioのASOBI!チームが開発を担当。ジャンルはVRプラットフォーマーとしている。プラットフォーマーというと、日本のゲームファンにはあまり馴染みのない単語のようにも思う。ジャンプアクションと言い換えたら、イメージが幾らか鮮明になるだろうか。ジャンプ操作を駆使し、賑やかなギミックに溢れた段差や台座を飛び移りながらゴールに進んでいくジャンルであり、代表的な作品としては、スーパーマリオシリーズがある。

 この作品の口コミが私の観測範囲に漂着するまでに、マリオの名は多く呟かれたようで、私自身、9月に配信されたPS LineUp TourでASTRO BOTのトレーラーが流れたときは、「THE PLAYROOMの素材使い回してマリオみたいなの出すんだ。( ´_ゝ`)フーン」くらいに思っていたのを覚えている。平面のモニタ用の映像であるトレーラーから受ける印象と、実際のゲームプレイの印象が全く違うことを、このときはまだ知る由もなかった。

 THE PLAYROOMとは、PS4のローンチ時から提供されているPS Cameraを使ったアプリケーション『THE PLAYROOM』と、PSVRのローンチ時から提供されているアプリケーション『THE PLAYROOM VR』のことだ。

store.playstation.com

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 いずれも無料で、フルのゲームではない。これらの開発を担当しているチームがASOBI!チームという名をいつから名乗り始めたのかは把握していないのだが、JAPAN Studioのこのチームは、PS4の初期の段階からPS Camera及びPSVR向けの開発経験を積み重ねてきており、THE PLAYROOMシリーズ初のフルのゲームであるASTRO BOTの開発においても、それまでのノウハウが大いに反映されているとのこと。後でより詳しく述べるが、PS Cameraと、PS Cameraによるトラッキングに対応しているDUALSHOCK4の密接な関係性も、ASTRO BOTの体験の深度を語る上で非常に重要なファクターである。

 では、この辺りで批評に移っていこう。

 

|創造性(新鮮味) ★★★★★

 いきなりだが、スーパーマリオシリーズへの言及を避ける意味はない。少なくとも私が批評する上では。ASTRO BOTの体験の性質は、3Dマリオの感覚にかなり親しい。ゲーム内容は全く似ていない。ASTRO BOTは飽く迄もVRプラットフォーマースーパーマリオシリーズ作品がVRプラットフォーマーであったことはないので、相似し得ない。似ている(親しい)のは、ゲームメカニクスレベルデザイン、アートワークなどを含めた全体のデザインの精神性・思想だ。複数のギミックがほぼ同一であることなどは、ジャンルとして成立する上での共通項として捉えている。

 そして、スーパーマリオシリーズの中でも、特に彷彿とさせられるのは、Wiiリモコンでの操作により、マリオがいる空間へのプレイヤーの干渉の仕方を格段に有機的にしたWii専用タイトル『スーパーマリオギャラクシー』(2007)だ。3Dプラットフォーマーとしてのスーパーマリオが重んじているのが、ゲーム空間の遊び場としての楽しさ。童話やカートゥーンの世界が実体化したような、好奇心・冒険心をくすぐる世界観。プレイヤーがその世界に有機的に干渉できる程、プレイヤーの感覚はその世界に接近する。

 ASTRO BOTの世界にプレイヤーが干渉する媒体となるPSVRとDUALSHOCK4。これらは、プレイヤーをゲームの主人公「アストロ」と空間を共有する次元にまで到達させた。

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 プレイヤーはアストロと空間を共有している。そして、DUALSHOCK4はゲーム空間においても同じDUALSHOCK4だ。このDUALSHOCK4でプレイヤーはアストロを操作し、コントローラガジェットと呼ばれる水鉄砲や手裏剣などで、アストロをサポートする。敵やギミックには、プレイヤーに影響を及ぼすものもあり、例えば砲台から射出されるミサイルに激突されると、衝撃音と共に視界にヒビが入る。

 

 

  プレイヤーは基本的に無敵で、ヒビもすぐに消えるが、嫌なら避けよう。頭を動かし、ヒョイと。

 

 

 ちなみに、水中においてはアストロもプレイヤーのモニタに物理的に干渉する。

 

 

  (かわいすぎる)

 アストロは、プレイヤーを信頼し慕っている相棒のような存在だ。話が逸れるが、昔、マリオギャラクシーをプレイしていたとき、それを見ていた祖母が「マリオは(私の名前)の子分みたいでかわいい」と言っていたのを思い出す。それを聞いて、その捉え方は面白いな(子分という表現にも笑えてくる)と思ったのを今もよく覚えている。ここで全ては紹介しないが、ASTRO BOTにはPSVRとDUALSHOCK4でなければ成立し得ない仕掛けが、全てのステージ及びダイナミックなボス戦ステージに満ち溢れている。

 

 

  一つ、水の凄さは分かりやすいので触れておこう。水がマジで水なので、もう、波とか、ゴボゴボってなる感じとか水しぶきとか。凄い。昔から、水の表現はゲームの技術の進歩を分かりやすく反映する部分なのは、往年のゲームファンならば頷くところだろう。「VRゲームの水」を体験する目的でASTRO BOTをプレイするのもアリかもしれない。バカみたいに「水、スゲエエエエ!!!」ってなれると思う。

 

 

  ステージに入るときに毎回繰り返される、ステージが読み込まれ、アストロを含め救出対象のボットたちを格納する機能もあるコントローラの中から、「行こうよ!」とアストロが催促し、アストロを放つと同時に、それまで環境音だけが聞こえていた世界に音楽が流れ始めるこの一連の演出は、ASTRO BOTのゲームプレイに愛おしい印象を残す、素敵な演出だ。ワクワクする世界が徐々に視界に広がり、アストロと共に「さあ、行くか!」と出発するのである。

 ASTRO BOTは、スーパーマリオシリーズが築いてきたプラットフォーマーの設計思想を色濃く引き継いで成り立っているが、好奇心・冒険心をくすぐるゲーム空間に接近するに留まらず、共有するという次元を創造(カタチに)した。

 

|ビジョン実現度(完成度) ★★★★★

 ASTRO BOTのビジョンは、プレイヤーがゲームキャラクターとゲーム空間を共有するというコンセプトを基に、VRだからできる遊びの楽しさをプレイヤーに伝えることだと認識している。そのビジョンは、完璧に成し遂げられていると言える。

 PS4ローンチの頃…更に正確には、PS3向けのモーションコントローラとして2010年に発売されたPS Moveの頃からだろう。長い期間をかけ、モーショントラッキングを利用したゲーム開発の研究をSIE JAPAN Studioは継続してきた。ASTRO BOTの開発においては、その研究を下地に、綿密な設計・バランス調整が施され、バラエティ豊かな仕掛けが満遍なく散りばめられた全ステージをひと周りするまでの間、VRでなければ絶対になし得ない体験への興奮が常に冷めやらない仕上がりとなっている。

 スコアアタックやタイムアタックに挑戦するチャレンジステージのアンロックに必要となる各ステージに1体ずつ隠れているカメレオン探しや、救出したボットたちが収容される宇宙船アストロ号でクレーンゲームをプレイする際に必要なコイン集めなどの寄り道・やりこみ要素の条件達成・ステージクリア達成難度は、やり直しのストレスが最小限に抑えられ、適度な達成感を味わうことができる。

 

 

 

  ただ、アクションゲームに不慣れな人からの「難しくて詰みそう」という声は幾つか見かけたので、イージーモードなどの救済措置があってもよかったのかもしれない。アクションゲームにそれなりに慣れていれば、全体を通し、プレイヤーへの刺激とゲーム進行のテンポは心地よいまま崩れないだろう。

 余談だが、『THE PLAYROOM VR』には、複数あるミニゲームの内の一つとして、ロボットレスキューというミニゲームが収録されている。これは、『ASTRO BOT : RESCUE MISSION』にレスキューという単語が入っていることからも推察できるように、ASTRO BOTの前進のような内容となっている。私は、ASTRO BOTのトロフィーコンプリート後、このロボットレスキューをプレイしてみたのだが、ASTRO BOTがそこからどれ程洗練されているのかはすぐに分かった。見た目はASTRO BOTとさして変わらないが、UIのレスポンス精度と速度、プレイヤーの行動に対するゲーム空間の反応の豊かさ、アストロのスムースな動きなどの磨き上げは、ASTRO BOTの没入感と快適性の底上げに絶対的に必要なものだ。

 VRゲームは、ほんの数分でさえ、退屈であったり煩わしかったりしてはいけない。そもそも、この2018年の時点においては、VRでゲームをプレイする環境が既に煩わしいのだから。ゴチャゴチャした配線が伸びるゴツい装置を頭に被り、イヤホンで耳を塞ぎ、私の場合はメガネまでしているので、拘束されている感覚が半端ない。ASTRO BOTのゲームプレイの快適さ、テンポの心地よさは、VR環境の煩わしさを、ほぼプラスマイナスゼロにできている。ただ、私はVRゲームの経験がまだ少ないので、VR空間での初めての体験の一つ一つに感動している分の加算もある。また、これは個人差もあるだろうけれど、このゲームは3D酔いがほとんど起こらない。平面のモニタでプレイする3Dゲームよりも起こらない。これは、本当に凄まじい成果だ。まさに、長年の研究の賜物なのだろう。

 ASOBI!チームの研究が、ゲームデベロッパーのカンファレンスなどで講演されることを期待したい。間違いなく、今後のVRゲーム開発の重要なヒントの数々を業界に還元できる筈だ。

 

|ゲームプレイ充実度(満足度・ボリューム) ★★★★☆

 ボリュームに関しては、総プレイ時間は把握していないが、プレイ開始から丁度1週間でトロフィーコンプリートを達成したことから推し量ってもらいたい。大半のトロフィーは、通常のステージ攻略とやりこみ要素に関連するので、特殊なトロフィーを取得しなくとも80%は越えると思われる。ASTRO BOTは、コンシューマ向けのゲームの中では、コンパクトにまとまっている方だ。実は裏ボスやら裏ステージやらがあって、それらを攻略する為に、それまでの経験と蓄えてきたゲーム内資産を全て応用して創意工夫を凝らすようなやり応えがある…とか、そういった濃密さは目指していない。

 この2018年は、小規模なスタジオによって開発されるインディーゲームが日本においても受け入れられ始め、コンパクトなゲームへの肯定的な意見は増えてきている。私の場合は、個人的な問題だ(と言いたい)が、今現在、ゲームをプレイするモチベーションのマネジメントに苦慮しており、「コンパクトなゲームだったら気構えずプレイできるな…」と思っているのは事実だ。ASTRO BOTがコンパクトであるが故に、その例に当てはまっていることは否めない。

 また、やはりVRゲームにおいては、環境の煩雑さによる身体的な疲労は拭い去れないものであり、平面のモニタでプレイする従来のゲームと比較して、単調で変化の少ないゲームプレイを許容できる時間は大幅に短縮される。地道なレベル上げとか、素材集めとか、そういったゲームプレイとの相性は厳しいものがあるだろう。

 このように、「VRゲームとしては」とか「コンパクトなゲームにも今は需要あるから」とか、そういったフォローは入るが、上述の2つの項目でも述べてきたように、ASTRO BOTのゲームプレイの構成は完璧だ。全てのボットの救出、カメレオンの発見とチャレンジステージへの挑戦、クレーンゲームで集めたフィギュアによる豪華なジオラマの完成などを経て、心地よいやり応えを感じたまま、プレイを終えることができた。

 しかし、私のゲームファンとしての性(さが)は今尚、濃密なゲームプレイの後に残る余韻を、ゲームで得られる幸福の上位に据えている。まだ公式に決定さえしていない続編では、更に大化けするだろうと勝手な期待を込め、★の置き場所を一つ空けておくことにする。

 

|技術的密度(作り込み) ★★★★★

 3つの指標と言っていたが、書きながら4つめの指標を思いついたので、加えて書いていく。

 私は、ビデオゲームにおける技術的なクリエイティブに敬意を示したい気持ちが強い。「グラフィックが美麗」、「物理演算が凄い」、「オープンワールドがめっちゃ広くてヤバい」など、そういうノリでバカ正直にはしゃげるタイプのゲームファンだ。

 ASTRO BOTのグラフィック表現の技術水準は高く、通り過ぎていく通路の岩肌や、洞窟の脇にある結晶の質感は、非常に現実味があり、思わずアストロを立ち止まらせ、まじまじと観察してしまった。草地にアストロが進入すると、草花はアストロの動きに応じてワサワサと動く。破壊された壁や、コインが入ったブロック、ボスが装着していたゴーグルの破片などが砕け散り、地面に散乱していく描写は、正確な物理演算によるリアルタイムな処理で表現されている。そして、水がマジで水という話は既にしたな。海は自然に煌めき、砂浜の波は自然に揺らめき、アストロが水面に身を投じれば、自然な波紋が広がる。プレイヤーが水中に頭を浸すとゴボゴボとなり、頭を出すとザバーっとなる。こういったゲーム空間の反応の一つ一つが不自然だったり、ぎこちなかったりしたら、没入感は大きく削がれていただろう。

 私には技術的な知識は無いので、「現実味があった」とか「自然だった」とか、そんな拙いことしか言えず、一つの項目として書くには、少々内容が薄くなってしまうが、個人的にかなり重視している部分なので、評価の指標としては外せない。

 

 批評は以上となる。

 最後に、コンシューマゲームにおけるVRの将来性について思うことを書いて、締め括るとしよう。

 PSVRは、今年で発売2周年になるらしい。「VR元年だ!」と、メディアも巻き込みざわついていた頃から、もう2年経ったのか。個人的には、そんなに経った気はしない。そんなPSVRを取り巻く世間の声は、「失敗した」、「3Dテレビなどの一過性のブームに過ぎない」といった意見が少なくないようだ。先に言うが、私は、そういった悲観的な意見には疑問を抱いている。特に、後者のような意見には。

 現状の家庭用VRシステムは初期導入費用が高額であり、とてもじゃないが気軽に楽しめるエンターテイメントとは言い難い。また、環境は非常に煩雑であり、一般家庭であれば、置き場所に困るのはほぼ確実だろう。既に日本人にとっても親しみ深いPS4やSwitchといった家庭用ゲーム機を購入するようなノリでPSVRを購入するには、乗り越えなければならない心理的な障壁が大きいのは、やむを得ない話だ。現に私も、PSVRは若干ヤケクソ気味に購入した。PS4を所有し、たくさんゲームを遊んできたものの、ここに来て何をプレイしてもモチベーションを高く維持できなくなったので、なりふり構わずに刺激を求めるという心境に至るまでは、PSVRの存在は、ほとんど気に留めていなかった。ぶっちゃけ、購入した時点から、「ある程度楽しんだら売っちゃっていいかな」と思っている。現状のPSVRへの私の期待値はその程度だ。

 しかし、VRという新たなエンターテイメントのフォーマットが、今の私のビデオゲームに対する漫然とした気持ちを内側から突き破り、興奮する気持ちを少しでも思い出させてくれる筈だという期待は本気でしていたし、ASTRO BOTは、その期待に真摯に応えてくれる素晴らしい作品だった。

 VRゲームが当たり前になる時代が必ず来ると、ゲームファンとして確信している。平面のモニタに映される3Dゲームは、飽く迄も擬似的な表現に過ぎなかったと、全てのゲーマーが理解するだろう。技術は日々進歩し続けている。家庭用として利用できるVRシステムは、順を追ってより小型化・独立化が進み、性能も向上していく筈だ。PSVRは、その確実に来る将来に先んじての取り組みであり、そこで成立するエンターテイメントを率先してカタチにするASTRO BOTを含むVRゲームの作品群は、ビデオゲームが人々に届けてくれる興奮を、この先の未来も追い求め続けていていいのだと、ビデオゲームが人の人生を豊かにしてくれるものだと信じている全ての人に示しているのである。

 PSVRとASTRO BOTが見せてくれるビデオゲームの未来の始まりを、この記事を以て保証する。